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四
日曜日の朝の御勤めに幸治は明子に内緒で文夫と共に久しぶりに支部に顔を出していた。
「あらっ、文夫君。お久しぶりね」
妙齢の女性が声を掛けてきた。
「あゝ、新井さんお元気でしたか」
「ええっ、元気よ。どなた、お友達?」
親同士が知り合いであったし同じ信者だったと言うことでもあって気軽に新井久美子は声を掛けたのが間違いだった。
「はい、同級の中山幸治君です」
「中山幸治君……まさかお母さんのお名前は中山明子さん?」
久美子の頭の中から恋敵である中山明子の名前は片時も消えることはなかったのであろう久美子は中山と聞いてつい口が滑った。
「ええ、そうですけど。どうして母の名前を知っているんですか」
幸治もびっくりして女性を見つめ直した。
「いえ……、私ちょっと用事を思い出しましたの。失礼するわ」
久美子は明子が未亡人だと知ったとき改めて依頼書から明子の家族調書を調べて三人の子持ちであることを知っていたのだ。知ってはいたが世の中は広いようで狭いもので、まさか恋敵の息子の幸治にこんな所で逢おうとは夢にも思わなかった。久美子は不味いことでもあるのか慌てて逃げるように立ち去って行った。
「どういうことなんだ。知り合いか」
「うん、親同士の知り合いなんでね。君と同じでね最近男に騙されたとかで入信したらしいんだ」
「へえ、あの人がねえ……でも何故母の名前を知っているんだろう。君が教えたのか」
「馬鹿云うなよ。何で俺がそんなこと教えなければならないんだ」
「母の知り合いにあんな人いたかなあ。会社が同じなのかなあ」
「そうかも知れないね」
二人とも合点がいかなかったがそれ以上詮索することはなかったが久美子には大きな問題だった。久美子は子どもの頃両親に連れられて支部に来たことはあったが大人になってからは宗教にはほとんど懐疑的で、むしろ敬遠していた。そこへもってきて恋い慕う田舎育ちの健介が新教宗教を毛嫌いしていた。だから両親がいくら折伏しても頑として久美子は入信しなかったのである。でも健介は明子を選び独立して久美子の前から離れていった
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