明子絶唱
健介と久美子が再び深い中になっていたとは夢にも思わなかった明子は幸治の入信を健介に打ち明けどうしたものかと助けを求めた。
「何、新興宗教に入信したって?どう云うことなんだ。弁護士殺害事件や地下鉄サリン事件があったばかりなのに!」
健介は全く予期せぬ出来事に声を荒げた。
「大きな声出さないでよ。明子にも分からないんだから」
「幸治君は私たちの結婚に反対するだけでなく何処まで私を困らせば気が済むんだ」
唯でさえ明子の煮え切らない態度に嫌気が差しているところへまたしても厄介な問題を持ちかけられて健介は苛立った。
「ねえ、何とかならないかしら。お願い」
「何ともならないね。信仰の自由は個人の問題だからネ。法律では片付かないよ」
信仰の自由だけは法律では解決できない問題だけにうんざりだった。
「あの理屈屋の幸治が入信したのには余程の訳があるんじゃないかと思うの。入信したことよりも幸治の身辺に何かとんでもないことが起こっているような気がするの。大学へも行かないと云うし、心配で夜もねられないの」
「大学へも行かないって。何を考えているんだ、あの馬鹿は!」
「ひどい事云わないで、そこらへんのところ男同士で聞いてみてくれない。息子であっても男の子の考えていることが女親には分からないの」
「分かったよ。一応聞いてみるよ。でもね宗教問題は個人の心の問題だからどうにもならないと思うよ」
素っ気なく言い放った健介は明子への気持が急激に冷めていき、久美子への思慕に傾注していった。


























































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