明子絶唱
葉子の切なる願いも無視して幸治はガソリンスタンドで洗車などのバイトをして勉強を怠っていた。
それというのも幸治は節子に煮え湯を飲まされていたからだ。高校に入って間もなくのことだった。校庭を掃除していた幸治は偶然にも一年D組の節子の生徒手帳を拾った。早速D組の女の子を介して節子を大切な物を拾ったからと学校の裏の神社に呼び出した。
「大切な物ってなーに?」
「えっ、君が竹下節子さんか……」
幸治は言葉に詰まった。節子が母の明子と余りにも似ていた。ピンクがかった色白に長い睫、小さな唇と可愛い鼻は丸顔にぴったりだった。セミロングに伸ばした漆黒の髪は何処か日本人形を思わせた。唯明子と違う点は小柄でなく節子はすらりとした長身だった。
「ええっ、竹下節子よ。貴方は?」
「小生は一年B組の中山幸治だ」
「幸治さん?それで大切な落し物って何よ」
「えっ、あっ……」
こんなに綺麗な女の子がこの高校にいたのかとうっとりと見惚れていた幸治は可愛い女の子に名前を呼ばれてしどろもどろになった。

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