明子絶唱
「母上、幸治はね、母上を救いたいんだ。血筋とか血縁には関係ないと母上は云うけど父上や真二が死んだりお爺ちゃんがあんなことをしたのは何かの祟りなんだ。その祟りから母上を守るには新興宗教しかないんだ。信仰心が足りなかったから次々と嫌なことばかり続いたんだ」
幸治は自分のことは棚に上げ表面上は家族の問題にし明子を守る口実にした。
「私を守ることと新興宗教と何の関係があるのよ。田舎の家はネ弘法大師様の生誕地よ、昔から真言宗なの。ご先祖さんに申し訳ないでしょう」
「既存の宗教では駄目なんだ。今はね皆で、仲間同士が助け合って皆を守るんだ。個人の信仰だけではどうにもならない時代なんだ」
折伏された人間の思い込みはいくら説明しても第三者には理解されるものではない。幸治も歯がゆい気持ちを拭い去ることが出来ない様子だ。明子は頭がおかしくなってきた。幸治が云うことにも一理はあるように思えたが、明子が抱いている信仰心とは本来神仏を自分の心の中で敬うものだと理解してきた。折伏された友達同士が集まって行うものではない筈だ。入信させられ洗脳された宗教の力に明子は脅威を感じた。
「それでその新興宗教と幸治の進学しないということとどう結びつくのよ。唯単に勉強が嫌になっただけでしょう」
「違うよ。幸治は母上の手助けになるように一日でも早く社会に出て働きたいんだ。学校なんか行かなくてもいいんだ。母上が夜遅くまで働いているのがたまんないんだよ」
口から出任せなのか真意の程は分からなかったが、母親を守ろうとする健気な幸治にこれ以上エロ本の事も追求するのは酷な気がして明子は口を噤んだ。

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