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苦悩

2008年9月 6日 (土)

明子絶唱第三章(9)

「えっ、何? どういうことなの……」

明子は一瞬何が起こったのか、幸治が泣き崩れた意味が分からなかった。姑の着物を抱えたまま呆然と幸治を見詰めていた。

「ねぇ、親父の葬式って何?」

「母上はもう父上のことは忘れてしまったのか。未だ半年しか経ってないんだよ。父上がどんな思いで死んで行ったのか母上は何にも考えないのか!」

「そんな事ないわ。酔っ払っていたとは云え運がわるかったのよ。あんな所で川に落ちるなんて、可哀そうな人だったと思ってるよ」

「そんなふうに母上は自分を誤魔化しているんだ。父上は落ちたんじゃない。自分から飛び込んだんだ。父上を追い詰めたのは僕たちだよ」

「そんな事はないわ。前後不覚に酔っ払って足を滑らせたのよ。もし仮にあんたの云うように飛び込んだにしても原因はお父さん自身だし自分で自分を追い詰めたのよ。あまりにも弱過ぎたのよ。母さんは強く生きることにしたの」

明子にも幸一の死の原因が果たしてなんだったのかはっきりしていなかった。いずれにしてもギャンブル狂いの幸一は二進も三進も行かなくなって何時かこんな結果になるのではないかと覚悟はしていた。だから薄情なようではあるが諦めが早かった。

「それがあいつとの結婚かい! そんなに簡単に次々と男を作れるなあ。母上は少しも父上を愛してなかったのか。僕は愛のない夫婦から産まれたやっかいものだったのか!」

幸治は苛立つように声を荒げた。

2008年8月30日 (土)

明子絶唱第三章(8)

「母上、お祖母ちゃんの着物捨てるのか。未だ綺麗やないか、勿体無いやん」

いつの間にか二階から降りてきた幸治は明子の乱暴な仕分けに怪訝そうに詰問した。

「いいのよ。もう着物なんか着る時代じゃないの。邪魔になるだけよ」

「お婆ちゃんも邪魔だった訳か。さぞかし亡くなって清々したろうなあ」

「何云ってんのよ。母さんの苦労も知らないで。今日までどんな思いで生きてきたと思ってるの。あんたも一人で大きくなったみたいな口利いて!」

「そうかよ。だったら今日から一人で生きていけばいいんだろう。母上はあの野郎と仲良くやればいいんだ。子供なんて邪魔なんだよね!」

「何もそんな事云ってないじゃないの。何処まで母さんを困らせれば気が済むの!うわぁ!……」

明子は自分の気持ちを分かってくれない幸治が歯痒く、自分の息子とは思えない情けない衝動に襲われ嗚咽した。

「何だよ。何も泣くような問題じゃないだろう。嬉しいんだろう、あいつと一緒になれるんだから!俺なんか産んでくれなければ良かったんだ!」

子供は親の泣き言に弱い。慌てて明子の機嫌を取ろうとするのが普通の子供だ。幸治はそうではなかった。実の子供より恋人に走る母親に精一杯の皮肉を込め、足蹴ざまに罵った。

「そんなに母さんが健介さんと一緒になるのが悪いことなの」

明子は涙ながらに訴えた。

「善いとか悪いとか言う問題じゃないんだ。嫌なんだよ」

「何が嫌なの。新しいお父さんが出来て嬉しいでしょ」

「親父の葬式は一回でいいんだ。二回も葬式をするのは堪らないんだよ!うっ、う……」

幸治は父親の死に顔を思い出したのか感極まったようにその場に蹲り咽び泣いた。あんなに毛嫌いしていた父親なのにやはり死ぬということは遣り切れないものがあったのだろうか。

2008年8月25日 (月)

明子絶唱第三章(7)

飽きられ、捨てられてもいい。明子は一生に一度命がけの恋がしたかった。女の悲しい性で如何なる形にしろ一度でも関係が結ばれると女は弱い。幸一に暴力で一方的に犯され子供まで授かり、子供可愛さにずるずると愛のない結婚生活が続いたが幸一の不慮の死で、皮肉にも結婚生活に終止符を打つことができた今、明子は女として悔いのない、近くの公園で真っ赤に燃え立っている百日紅の花のような激しい恋がしたかった。好きでもない幸一との性生活の反動か母親よりも女の部分がより強く吹き出し、幸治の反対を押し切って例え一日でもいい健介との愛の巣を育みたいと切望した。

明子は渡辺の助言も無視し、強引に辞表を突きつけ退社した。身体を張って無理やり止めることも出来ず辞表を手にして呆然と明子を見送るしか渡辺は方策がなかった。

「馬鹿やろう。恩知らずめ!」

窓際に立って未練たらしく明子の後ろ姿を睨みながら口の中で口汚く罵った。

珍しく都会でも朝からいわし雲が長く尾を引き爽やかな秋風が吹いていた。明子は朝早くから引越しの準備で忙しかった。亡くなった夫や姑の遺品は全て廃棄処分した。姑のちり緬の長襦袢や絣の着物は捨てるには少し勿体無い気がしたが思いが残るようなものは持って行きたくなかった。過去を清算し思い出までも断ち切ろうとしていた。

2008年8月11日 (月)

弾けるギャルみこし33

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2008年8月 2日 (土)

明子絶唱第三章(4)

厳しかった残暑がようやく終わり、朝夕は涼しい秋口の風が通り抜けるようになった。明子は幸治のことは男同士の話し合いということで健介に託して、取り敢えず身辺整理をするためパートを辞める決心をした。それは健介の希望でもあった。経費節約のためパートを辞めて健介の秘書とまではいかないが、法律事務所の電話番をして欲しいというのが本音だった。明子も健介と一緒に仕事が出来ることが嬉しくもあり不安でもあったが、少しでも健介の役に立てばと快く了承した。

だが、明子の心は嬉しさとは裏腹に重かった。渡辺課長には一方ならず世話になりながら裏切るような形になったのが心苦しかった。互いの事情があったとはいえ、結局は期待したようなことは何にもなかった。それが良かったのか悪かったのかは分からないが、今となってはどうしようもなくどちらの家庭も壊さなかったことを良しとするのが大人の恋だと明子は勝手に解釈した。けじめをつける意味で明子は恐る恐る辞表を出した。

「えっ、ほんとなの?どういうこと何や。折角チーフにしたのに何が気に入らないんだ。冗談だろう。それとも僕が何かした!」

渡辺は突然に明子から辞表を突きつけられて動顚したのか一気にまくし立てた。

「いえ、課長には本当に良くして頂けました。感謝しています」

「訳が解らんな。それじゃ何故なんだ。わかるように説明してくれ!」

渡辺はあれほど明子のために面倒を見てきたのに、歯軋りを噛む思いだった。男に生まれて初めての幸運が舞い降りて来た矢先目の前に突然頑丈なシャッターが降ろされ、真っ暗な部屋に閉じ込められたような閉塞感に襲われた。一生に一度在るかないかのチャンスだった。愛してもいない妻子や家庭の平穏のために踏ん切りを着けなかった己の気の弱さが腹立たしかった。

2008年8月 1日 (金)

弾けるギャルみこし32

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2008年7月31日 (木)

弾けるギャルみこし31

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2008年7月27日 (日)

弾けるギャルみこし30

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2008年7月26日 (土)

明子絶唱第三章(3)

健介が幸治を説得すると云ったのを制して明子は母親である自分が先に事情を説明するつもりだったが感情が先走りして旨く幸治に真意が伝わらなかった。幾ら幸治と話し合っても埒が空かないと判断した明子は田原本健介に乗り出してもらうより他に方策がないと悟った。

「やっぱり母親では駄目だったわ。男の子は男親でなければ理解し得ない部分があるのかしら、私には幸治がなにを考え何をしたいのかさっぱり分からないの。ただ弁護士にはなりたくない。弁護士になるくらいなら検事の方がいいって。それぐらいなの、話が通じたのは。ただ健介さんの所には行きたくないの、その一点張りなの」

「そうだなあ、あの年頃の少年はみんなそうなんだ。社会にも親にも抵抗するんだ。自分でも何のために何に反発しているのかよく分かっていないんだ。唯もう苛つくんだ。大人になりきれない自分に、思うようにならない社会にね」

「男の世界って難しいのね。どうすればいいいの」

「なーに大丈夫だよ。幸治君は純情すぎるんだよ。だけど男は純真でなければならない。それでいいんだ」

何がいいのか、明子は純真と依怙地は違うような気がした。

2008年7月25日 (金)

弾けるギャルみこし29

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2008年7月19日 (土)

明子絶唱第三章(2)

男と女は成長するにしたがって性格的にも生理的にもやはり違って来るものだろう。大人の仲間入りをしようとする幸治にはまだそこら辺がよく分からず未知の世界なのだろう。男と女、構造的には異なることは生物の時間に教わり知識としては理解していても体感的には謎の部分が多かったに違いない。無理に背伸びをして精神的自我に目覚め一人前の男になろうとしても男と女の間には幸治の想像を超えた神秘というか謎の部分が多かった。何故人間は男と女の二種類に分かれているのか。自分と異なる女という生き物に興味を持ち、魅かれていくのか自分自身が分からなくなっていたに違いない。幸治の関心は勉強よりも神秘のベールに覆われた異性に傾注し何も手に付かなくなっているようで明子を見る目が鋭く異様に感じられた。無理もないのだろうか急に身体ばかりが発育し変化していく過程で精神が未発達のままで身動きが取れなくもがき苦しんでいたのかもしれない。頭の中に想い悩むことは母に抱かれてあの柔らかい明子の乳房の感触が脳裏から離れずその快感に酔いしれしばしば幸治の夢の中であやふやで大胆な妄想が広がり夢精となって発射された。その度に幸治は何か大罪を犯したような恐縮した心境に追い詰められ、情けなく打ちひしがれた自分がいた。そんな悩みを打ち明ける相手も男一人の家庭ではいなかったことが幸治や明子一家の悲劇の始まりだったのかもしれない。

2008年7月18日 (金)

弾けるぎゃるみこし28

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2008年7月17日 (木)

弾けるぎゃるみこし27

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2008年7月16日 (水)

明子絶唱第三章(1)

第3章

人の一生ほど儚いものはない。花とか動物ならば心を和ませたり、感動を与えたりして存在価値がある。人間は何にもない。傲慢で己の欲望のみに生きている。地球環境を汚し、限りある資源を食いつぶし明日なき世界へ破滅の道をひた走る。美しい自然なんか欲望の前には目に入らない。欲望のない人間はその存在すら否定される。欲望があるからこそ人間は生きていけるのかもしれない。

人生のうちで欲望もなく純粋に生きていられるのは十三才から十五才の中学生時代だけだといっても過言ではない。でも幸治は違っていた。既に周囲の環境から欲望の蠢く渦中に巻き込まれていた。どちらかと言えば弱者の味方の弁護士よりも不正を許さず真実を追究する検事の方が何事にも厳しい幸治には向いているのかもしれない。幸治は幸治なりに自分の性格に合った将来の事を考えているのだ。明子はそれが嬉しく我が子ながら頼もしくもあったが十三才にしては余りにませ過ぎているようにも思え何処か不安な面もあった。

その不安を取り除くように無学な明子は幸治をひしと我が胸に抱きしめ溺愛した。普通ならば幸治ぐらいの年齢になれば母親の溺愛は鬱陶しく閉口し逃げ出すものだが幸治は違っていた。むしろ母親に抱かれることを望み自ら抱かれることに喜びを抱き快感を感じていた。柔らかい胸に抱かれてうっとりと夢心地になっていた。それは傍目には仲睦まじく写る反面何か嫌らしくおぞましく見えることもあった。父親が早くから家に寄りつかず父親代わりをしてきたことも起因しているようであったが、何よりも明子が小柄で可愛く幸治と年齢差がないということが母親ではなく無意識のうちに一人の女として感じていたのかもしれない。

 そんな事とは露知らず明子は直ぐに切れる父親の血を引く幸治が可哀想でもあり不安でもあった。その不安を取り除くには溺愛するしか方法を知らなかった。それは益々幸治を苛立たせ快感を貪る危険性を孕んでいた。

 母親を奪おうとする健介に敵対心が芽生え口に出して云えないもどかしさが幸治をかたくなに健介を拒否しているように見えた。

「幸治、母さんねあんたが健介さんを嫌っているのはわかるのよ。でも何故嫌っているのか解らないの。ねえ何故なの」

「あいつは真二やお爺ちゃんの事でいろいろやってくれたかもしれない。でもそれはあいつの仕事なんだ。愛情でもなんでもない。僕にもようわからんがあいつの目的は何なんだ。貧乏な我が家にお金があるわけもなく、金目的でもなさそうだし何か不気味なんだ。母上しっかりしてよ。冷静に考えてみてよ。あんな口先だけで人を騙すような男の何処がいいんだ」

冷静に考えなくても幸治の云う通りなのかも知れない。そんな不安は明子の胸の奥底に蟠っていないと言えば嘘になる。明子はその不安を常に胸の奥へ奥へと閉じ込め見ないように努めて来たのは事実だ。でもそれを幸治から指摘されると余計に否定せざるを得なくなった。

「お金もないこんな子供が二人もいるおばさんに結婚してくれって言う? 普通は言わないわよね。結婚ってもっと神聖なものでしょう。母さんは健介さんを信じてるの」

「信じるのは勝手だよ。でも僕たち子供を巻き込まないでよね」

どこまでいっても堂々巡りで明子と幸治の妥協点はなかった。

「葉子はね、健介さんのこと好きみたいよ。葉子と母さんが健介さんの所へ行けば幸治はどうするの」

須磨の海岸へ行ったとき葉子は幸治が見ていても呆れるほど波打ち際で健介と戯れはしゃいでいた。真夏の太陽の光りをイッパイに浴びて本当の父娘以上の何か異常な関係に幸治には感じられたのを目の当たりにしていた。葉子は五年生、母親と違って体格がよくもう初潮が始まっていてもおかしくない。もう一人の女性として新しい若い父親というより格好いい恋人のように感じたのだろうか。だとすれば葉子は母親と一緒に健介のマンションに喜んで行くに違いない。幸治は何とか葉子を行かないように言い包める方法はないものかと思案したが咄嗟には妙案が浮かばなかった。

「お兄ちゃん、お兄ちゃんオシッコ!」

小さい時からまるで母親のようにおしめを換えたり、パンツを脱がせて便所まで連れて行ってやったりお風呂に一緒に入り頭から足の先まで洗ってやった。祖父母は病院へ行ったきりだし、母親はパートで大人が一人もいなかった昼間は家庭が暗く不安が襲い掛かってきたのだろう一日中葉子は幸治にくっついて手を焼かせていた。何処へ行くにも手を引いて二人は恋人のように育った。そんな葉子が急変し幸治を避けよう避けようとしていた。

2008年7月14日 (月)

弾けるギャルみこし26

18

あらよっと

    どっちへ行くの

            お好きにネ

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